絵本「まんげつのよるに」は、大人気シリーズ「あらしのよるに」の7作目(完結編)です。
もともと6作目の「ふぶきのあした」で最終巻だったはずでしたが、「続きはどうなるの?」という読者の反響がすごく、小学4年生男の子からの「雪の中からガブがモコモコと出てくると信じています」という声がきっかけで、この完結編が生まれたんだとか!
☑本記事の内容
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ではさっそく見ていきましょう。
「まんげつのよるに」あらすじ(ネタバレ)
なだれに飲み込まれたオオカミのガブは生きているのだろうか?
ヤギのメイはガブのことを思いながら、みどりの森でたった1匹でくらしていた。ガブにはもう会えそうにない。生きる気力もなくなったメイの体はどんどんよわり、ただ時間だけがすぎていく。 そんなとき、キミドリが原にオオカミがいるとううわさを聞いた。メイはガブかもしれないと思い、走りだした。
そのオオカミはガブだった。しかし、ガブは自分がだれでなぜここにいるのか全部わすれてしまっていた。ただ、ひとつだけヤギのことはおぼえていた。頭の中は「ヤギの肉が大こうぶつだった。もう一度ヤギを食べたい」ということだけ。メイとともだちだったことはおぼえていない。
キミドリが原にやってきたメイは、ガブを見つける。あまりの嬉しさに「がブー」と叫び走りだした。ガブもメイにむかって走りだす。「なんてうまそうなヤギだ」と思って。
ガブはメイをつかまえ、どうくつにはこんだ。あしたのまんげつの夜にメイを食べるためだ。メイがいくら思い出を話しても、まったくガブは思いだしてくれない。メイはこれまでのすべてをくやんだ。 「こんなことになるんだったら、”あらしのよるに”出会わなければよかった。」 そのとき、ガブはすべてを思いだした。 2匹はいっしょにおかの上にのぼり、まんげつを見た。 月にうつった2匹のかげは、もうヤギでもオオカミでもなく、ただふたつの生きもののすがただった。 |
「まんげつのよるに」読書感想文
この本を読んで、本当の友だちについて少しわかったような気がした。
学校がかわったり、住む場所がかわったりすると、毎日のように遊んでた友だちとすぐには会えなくなってしまう。そうなると、今まで通りの仲ではなかなかむずかしい。ほかの友だちと遊ぶこともふえるし、ちょっとづつ遠くなっていってしまう。
メイも大のなかよしだったガブとはなればなれになっている。でも、いつか会えるんじゃないかと、メイはずっとガブのことを考えつづけていた。でも、いつまでたってもガブは来ない。ガブとの思い出の中だけで生きてるうちに、メイはどんどんよわっていってしまう。
そこまでずっとガブのことを思いつづけられるメイはすごいと感じた。ふつうなら、やっぱり忘れてしまうのかなと思ったからだ。
でも、メイが信じつづけたからか、奇せきは起こった。ガブとまた会うことができたのだ。でも、この出会いの場面はとても悲しかった。ガブがすべてを忘れてしまっていて、メイのことをエサとしか見ていなかったから。
ずっとガブのことを思いつづけていたメイなのに、これじゃあんまりだと思う。いくらメイがガブとの思い出を話しても、ガブは全然思い出さない。メイを食べることしか考えていない。だけど、最後にメイが言った「あらしのよるに」という言葉がきっかけとなって、ガブはすべてを思い出した。
メイとガブが初めて出会ったのは、あらしのよるだった。いろんな偶然が重なったいちばん初めの出会いは、やっぱり2匹にとって大切な時間だったんだ。すべてを思い出すきっかけに、とても感動した。
最後の場面も印象にのこった。まんげつを見る2匹のことを「もうヤギでもオオカミでもなく、ただふたつの生きもののすがただった」と書かれていた。なんだか、この文に本当の友だちはどんな友だちなのか、ヒントがあるような気がした。きっと、見た目や考え方がちがっても、どんなに遠くはなれていても、しっかりと気持ちがつながっていることなのかなと思った。
「まんげつのよるに」結末について思うこと
「まんげつのよるに」の結末は、大人が読んでも本当に感動的ではないかと思います。
とくにこ最後のこの一文、
のぼってきたまんげつに、二ひきのかげがかさなった。月の中にうつったそのかげは、もう、ヤギでもオオカミでもなく、ただふたつの生きもののすがただった。
すごく味わい深いものがあります。
ヤギとオオカミはふつうは敵対する関係、ましてヤギにとってはオオカミは命を狙ってくる敵、仲良くするなんて絶対にないでしょう。
でも、嵐の夜に偶然2匹は出会い、その仲を深めていきます。そして、ヤギとオオカミという種の違いを軽々と超え、その上の次元でつながっています。
だからこそ、”ヤギでもオオカミでもなく、ただふたつの生きもののすがた”だったんでしょうね。
子どもの時から大人になっても、うわべだけのいろんな要素(性別、住んでいる場所、家庭環境、仕事、年収、肩書き…など挙げればキリがないですが)で、人を判断していまいがち。自分と共通点のある人と仲良くなりがちです。もちろん、これにはメリットもありますし、何も悪いことはないと思いますが。
ただ、メイとガブは常識や損得など周りの意見に影響されることなく、2匹だけにしかわからないかけがえのない関係性をつくりました。
大人になるにつれてちょっと忘れてしまいがちになる、大切な感情を思い出させてくれる、そんな絵本だと感じました☆
「まんげつのよるに」読み聞かせ動画
気持ちのこもったセリフ、ナレーションで聞くと、より感動的なお話です。耳からも楽しんでみてはいかがでしょうか。
私は、15分過ぎからのどうくつの会話シーンが印象的で、思わず見入ってしまいました☆
「まんげつのよるに」あらすじ・感想文 まとめ
「まんげつのよるに」のあらすじ・読書感想文について見てきました。
嵐の夜にシリーズの完結編にあたる一冊で、これ以上の結末はないんじゃないかって言うくらい素敵なラストだったと思います。
本記事でも十分内容はわかりますが、ぜひ絵本で読んでみるのがおすすめです。あべ弘士さんが描く絵と合わせて見ることで、より2匹の感情が伝わってきて、ぐっとくるものがありますよ☆
「まんげつのよるに」では、過去作品のシーンがいろいろ出てきて、またシリーズ1作目から読み返したくなってしまうのも魅力です。
こちらの完全版には、全7作品がすべて収録されていて、さらに作者のきむらゆういちさん、絵を担当されたあべ弘士さんの裏話だらけの対談も。
ぜひお時間あるときに、物語の世界に浸ってみてはいかがでしょう(*^^*)
シリーズ全作品のあらすじ・読書感想文はこちらの記事でまとめています。
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