太宰治「女生徒」あらすじ・読書感想文

感想文
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多感な14歳の女生徒の一日が告白体で綴られている「女生徒」は、ある読者(有明淑さん)が太宰治のもとに送った手紙がもとで生まれた小説です。

女性の心情、思春期特有の感覚が細やかに描かれていて、共感するシーンも多いのではないでしょうか。気持ちの浮き沈みが激しくて、不安定な感じが何とも言えません。

本記事では、この作品の

  • あらすじ
  • 読書感想文

をまとめています。”話の内容を簡単に知りたい””読書感想文の例文を見たい”なら、ぜひご覧になってみてください☆

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「女生徒」あらすじ

朝、目が覚めると不思議な気持ちになる。

ぱっと目が覚めるなんてことはなく、じわじわと目が覚める。起きて早々嫌な気持ちが溢れてくると、自分からお婆さんのような「よいしょ」という掛け声が出てその下品さに驚く。着けたくもない眼鏡を掛けて庭に出る。

 

父が亡くなってしばらく経つが、実感がわかない。そんなことを考えていると、飼っている犬が寄ってくる。片足が不自由な犬が可哀想で、苦手だった。
母は誰かの縁談のために大忙しで、朝からいない。私は部屋の掃除をして着替えると、ひとりで朝ごはんを食べた。

 

学校に向かうために電車に乗り、空いている席を見つけると、荷物を置いて少し身なりを整えた。すると眼鏡の男性が、私のお道具をどけて、席に腰掛けてしまった。

私が「あの、そこは私、見つけた席ですの」と言うと、男は苦笑して平気で新聞を読み出した。よく考えてみると、どっちが図々しいのかわからない。仕方なく、荷物を網棚に乗せた。そして雑誌を読もうとした時ふと思った。

自分から、本を読むということを取ってしまったら、この経験の無い私は、泣きべそをかくことだろう。それほど私は、本に書かれてあることに頼っている。一つの本を読んでは、パッとその本に夢中になり、信頼し、同化し、共鳴し、それに生活をくっつけてみるのだ。
お茶の水に着くと、なんだかすべて、けろりとしていた。

 

放課後は、同級生のキン子さんと美容室に行った。私のことを褒めてくれるが、大袈裟なのでさすがに嫌になった。今朝、電車で隣り合わせた厚化粧のおばさんを思い出す。ああ、汚い、汚い。自分が女だけに、女の中にある不潔さがよくわかって、歯ぎしりするほど嫌だ。

 

帰宅すると、お母さんがお客さんにおべっかを使っていた。お客さんの前にいるお母さんは、ただの弱い女だ。

お母さんは用事があると行ってお客さんと出掛けていき、私は風呂を済ませて部屋に戻る。すると帰宅したお母さんが映画を見に行ってきてもいいと言ってくれた。私は嬉しくてたまらない。お母さんを大事にして、立派に生きがいを感じたいと思った。

 

洗濯、掃除を済ませて布団に入る。明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。けれども明日は来ると信じて寝るのがいいのだろう。
おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるのか、ごぞんじですか?もう、ふたたびお目にかかりません。

「女生徒」読書感想文

なんて頭でっかちなの!と、ひとしきり読み終えると、ため息が出てしまう。だけど、部分部分、とても共感するところがあり、驚いた。

 

この小説は、すべて女生徒の語りで出来ている。朝起きて、夜寝るまでのとある一日を描いているのだが、全体的に悲観的だったり、ちょっとポジティブになったりと、感情の起伏が激しい。だけど、それは全て女生徒の「心の中」でだけ起こっている現象で、表には決して出さないようにしている。

親や大人、他人に言えない気持ちが溢れ出てくる気持ちは、よく分かる。太宰治はどうしてこんなに細やかな女性の気持ちが分かるのだろう?と不思議に思ったのだが、この小説はとある女生徒が、実際に綴った日記を太宰治に渡し、それを元に書かれたのだという。今で言う「二次創作」のようなものだ。

 

朝起きて、女生徒は早々に嫌な気分になっている。庭に出て足の不自由じゃないほうの犬ジャピイを可愛がって、不自由な犬のカアをいじめることで、自分の情けなさを感じている。不完全なものの惨めさを、自分に映しているのだろうか?この話を全体的に見ても、彼女の考え方はちょっと悲観的な気がする。

 

電車で取っておいた席を取られて悲しむかと思えば、そうでもなく、自分を内心で励まして雑誌に目を通そうとする。だけど、雑誌を読み始めるとまた別の思考がぐるぐると周りだし、頭がパンクするのではないかというくらいあれこれ考える。何かにショックを受けて、自分を守るために開き直ったつもりでも、やっぱりどこか傷が残っているのかもしれない。とめどない思考は、そういう心の傷を塞ぐための、カモフラージュにも見えた。

 

ああ、と共感した部分は他にもある。放課後、女生徒が電車で居合わせた厚化粧の女性を思い出し「女は、汚い」と思うシーンだ。

女って、と言い出すと差別的になってしまうのだが、女性特有のしたたかさや、生き抜くための姿勢のようなものを、私も感じることがある。それは「賢いなあ」と思う半面、「ちょっとずるいよなあ」と思うこともある。

それは、もしかすると男性目線なのかもしれない。女生徒は、思うにものすごく生真面目な少女なのだろう。個々のことについて、ものすごく細かい描写をしているあたり、繊細で、だけどそんな自分のことをよくわかっていて、どうにかしたいけどうまくいかず、やきもきしている。どこか応援したくなるような人物だ。大人になる前の学生は、みんなどこかで彼女のような柔らかい部分と向かい、格闘しているのかもしれない。

 

帰宅して、お客さんが来ているときにおべっかを使うお母さんに対する気持ちは、私も何度も抱いたことがある。親にもよるのかもしれないが、ここに書かれているお母さんは女生徒の言うように、自分に自信のない人なのだろうなと思う。

自分にも、自分の子にも自信に満ちあふれている人は、嘘もごまかしもうまく言いながら、子どもの気持ちを優先すべきときはきっとそうするだろう。ちょっと守りに入ってしまうあたり、まだ怖いのだ、自分を表に出すのが。

 

そうした母を、守り抜こうとしている。人生をその人の時間に優先していこうとする姿勢が描かれているが、ちょっとそれはやりすぎ!と突っ込みたくなった。子どもの人生は、子どものものである。家族にも様々な形があるのだろうけれど、彼女にも彼女自身の人生があるはずだ。

好きな男性と付き合ったり、結婚して子どもを産んだら、どうなるのだろうか。それでも、優先順位の一番は、お母さん?シングルマザーが多くなってきた近年、そんなお母さんたちはこれを読んでどう感じるのかな、と思った。

 

そして最後には、眠りにつく最中、自分をシンデレラに見立てて「王子様さようなら」と言っている。これは、つまり独身まっしぐらということなのだろうか。それでもいいのだろうけれど、やっぱりどこか悲観的過ぎるなあと思う。お母さんが一人になってしまうから、可哀想だから。そういった気持ちは、お互いの心の自立のために捨て去りたいものだと思う。

暗いものは全部振り切って、明るく自分自身の人生を描こうと思う。私は「王子様、こんにちは」と言って、眠りにつきたい。

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まとめ

「女生徒」のあらすじ・読書感想文をみてきましたが、いかがでしたでしょうか。

14歳の女生徒の1日が描かれているだけのお話なんですが、次々起こるいろいろな出来事に感情が上がったり下がったり、思春期特有の繊細な心理が細やかに描写されています。太宰治は女性が主人公の作品が多くありますが、やはり女心を深くわかっているのでしょうね。

 

この作品で読書感想文を書くなら、主人公である”女生徒の感情”について描くことになりますが、共感できる部分もあればいまいち理解できない部分もありませんか?

そこで、あなたと女生徒とのズレについて、深めていくと面白い感想文になるのではないかと思います。例文のように、明確に違いを書いてみるとオリジナリティのある感想文が見えてくるはず☆ぜひあなたらしい感想文を書いてみてください(^^)/

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