太宰治の名作「走れメロス」、学校の教科書にも載っている有名な小説です。太宰の作品のなかでも、ストーリーが明解で読みやすい作品ではないでしょうか。
本記事では、メロスの簡潔なあらすじについてまとめています。サクッと内容・ポイント(作品の主題・名言集・最後のシーンの意味など)を知りたいというあなたにおすすめです。
また、読書感想文の例文も載せていますので、感想文を書く際に参考にしていただければ幸いです☆
あらすじ(ネタバレ)
羊飼いでとても真っすぐな性格のメロスは、村から十里はなれたシラクㇲの市へ来ていた
結婚式をひかえた十六になる妹のために、花嫁衣装などを買うためだ。彼の竹馬の友セリヌンティウスを訪ねようと歩いていると、町の様子がなぜか寂しいことに気づく。 人を信じれなくなった暴君ディオニスは、数多くの人を殺しているからだった。 理由を知ったメロスは激怒し王を殺すため、城に乗り込むが捕らえられてしまう。
メロスは王に「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ」と言うが、王は「口では何とでも言える」と聞く耳を持たない。 市を暴君の手から救うのだと言うメロスを、十字架にかけられることになれば同じように命乞いをするだろうと王は嘲笑した。 メロスは、処刑まで3日間待ってくれたら、妹の結婚式を無事済ませて必ず戻ってくると言った。 信じない王に対して、その間は親友のセリヌンティウスを人質として差し出すと提案し、受け入れらる。事情を聞いた友は、迷わず人質になることを受け入れた。
メロスは一睡もせずに村へ走り、翌日の午後には戻ることができた。 妹にはシラクㇲに用事を残してきたので、翌日に結婚式をするようにすすめた。そして、結婚式は行われた。夜には雨が降ってきたため、室内に場所を変えて宴は続いた。メロスは二人にお祝いの言葉を言い、眠りについた。 翌朝、メロスは急ぎシラクスへと出発した。人質の友を救うため、自らが処刑されるために走ったのだ。
余裕を持って着くかと思われたが、大雨で橋が流され道が塞がれてしまっていた。メロスは激しい川の流れをかきわけ、何とか向こう岸へたどり着く。 さらに、その先の峠道で山賊に出会うも、必死に倒し峠を駆け下りていった。 疲れがピークに達したメロスは動けなくなり倒れこんでしまう。 そこで、初めて友を見殺しにしようかという気持ちになった。そのまま眠りに落ちるが、湧き水の音で目を覚ました。水を飲み、さきほどの迷いを断ち切った。 そして、友のためにシラクㇲへと必死に走った。口から血を吐きだしながら、服はもはや全裸に近い状態になっていた。
日没の直前、処刑が行われる直前に何とかメロスは間に合った。 磔からおろされたセリヌンティウスに、一度だけあきらめかけた自分を殴れとメロスは言った。彼も同じで一度だけメロスを疑ったという。 お互い殴り合い、2人は抱き合った。 二人の信頼しあう心が、王の猜疑心を打ち破った。心を改めた王は二人に仲間に入れてほしいと頼んだ。その様子を見ていた民衆は王を讃えたのだ。 |
読書感想文の書き方~押さえておきたい作者が伝えたかったこと~
この短編小説で感想文を書くにあたって、次のテーマを押さえておくことでより内容に深みがでます。
- 信頼しあう心
- 人間は弱い生き物である
- マイナスとプラスは一人の人間の中に同時にある
それぞれのポイントを簡潔に見ていきましょう。
信頼しあう心
この小説のテーマ(主題)は、”信頼することの大切さ”でしょう。メロスとセリヌンティウスの関係性がまさにそれです。
メロスは人質としてセリヌンティウスを差し出し、彼もまたそれを即座に受け入れます。現代社会では命をかけるような状況になることはまずないので、すこし違和感があるかもしれません。
いきなりこんなこと提案するメロスは、ちょっと勝手なのではないか?と感じます。
それはさておき、”心から相手を信じることで相手もまたそれにこたえる”ことの素晴らしさが伝わってきます。
そして、信頼が重要であることを際立たせるために、王の猜疑心が強調されています。ちょっとしたことで身内や民衆を殺してしまうとは、恐ろしい暴君ですよね。
人間は弱い生き物である
人を信じるということが素晴らしいとわかっていても、それをやり通すことは難しいものです。ちょっとした気の迷いから疑いの気持ちがむくむくと育ってしまうことがあるのです。
- 疲労困憊したメロスがセリヌンティウスを見殺しにしようとした
- セリヌンティウスも帰りの遅いメロスを疑った
この2つの心理が描かれていました。強い絆で結ばれている二人でさえ、気の迷いから信頼が薄まることがあるのです。人間の意志の弱さが、赤裸々に描かれています。
しかし、同時にそれを乗り越えることができるとも描かれているのが救いです。
マイナスとプラスは一人の人間の中に共存する
相反する気持ちは、一人の人間の中に同時に存在するという事実が描かれています。
- 王様は、はじめ猜疑心に満ちていましたが、最後には信頼することの大切さを認めます。
- また、互いを強く信じあうメロス・セリヌンテイゥスも、一瞬の間お互いを疑います。
つまり、一人の人間の中で、”信頼””疑い”という両極の気持ちが揺れ動いているのです。
もちろん、この揺れ具合は個人差があるでしょう。疑いが強い人、信頼が強い人、相手によってころころ変わる人、さまざまです。
ただ、どの場合にも言えることは、何かのきっかけで気持ちは変わってしまう可能性があることです。だからこそ、普段から信じることの大切さを意識し、疑いの心に負けないようにすることが大切なのでしょう。
読書感想文
感想文①
メロスは、自分の命がすり減ってでも、友のセリヌンティウスの命を守りぬくと決めた。わたしならどうするだろうと考えた時、校内の体育の授業で行われる、マラソンのことを思い出した。
マラソンはこの物語の中でも出てくるが、メロスが自分の身代わりになったセリヌンティウスのために、自分の村、そしてシラクスの市に戻るため、その復路を全速力で走り抜ける。
校内のマラソンはそこまでの距離ではないが、学校を何周かするためそこそこ辛い。最初のほうはそこまででもないのだが、だんだんと辛くなってくる。疲れて途中でリタイアしたり、歩いている子が見えてくると、自分も歩きそうになってしまう。
だけど、自分は自分でがんばるのだと決めると、走れるものだ。メロスほどではないが、そのように何かを決めて必死にやり抜くことが大事なのだ。
最初のほうでメロスに怒りを向けられている王は、最終的にメロスを許し、自分のやってきたことを許してほしいと反省していた。ここがとても印象的で、心に残っている。自分の間違えたことや恥ずかしいことを、素直に認められるのはすごいことだ。
わたしも、家族や友人と口論になることがたまにあるが、そんなときはプライドが邪魔した
自分から謝らなくてはいけないと分かっていても、意地を張るのでなかなかこちらから謝れない。そのまま、相手から謝るきっかけを作ってくれないかとねだってしまうのだった。
これでは、相手も自分も、苦しい日が続く。
自分から謝れなかったり、自分は正しいのだと自己を主張するのは、自分がどこかずれていて、それを認めると恥をかくのかもしれないと、どこかで恐れているからなのではないかと思う。それは実は、相手のほうだって、きっと同じなのだ。
人を許すほうもまた、とても気をつかうし、労力を必要とする。
恥をかくのは怖いことかもしれない。自分がどんなレッテルを貼られるのかと考えて、不安になり、自分を強く見せようとしたり、引きこもってみたりする。
だけど、人生を長く見てみると、その長い年月の中の一瞬の恥は、どうしても取り返しのつかないことなのだろうか?
メロスも、後半で、誰かに見られたわけではないが、自分が友の知らぬところで友を裏切ろうとした弱い自分を、大いに恥じている。しかも、それを拭い去るために、なんとわざわざ共にそれを告白した。
そうしたらどうだろう。友のセリヌンティウスは、「実はわたしも、君を疑ったのだ」と、自分の恥を告白してきたではないか。わたしはここを読み、大変驚いた。自分の恥をしっかりと認め、先に進もうとすることで、道は自然と開いて行く。
自分が意固地になったとき、苦しいとき、そんなときには、この物語で悩みそして困難に打ち勝ったメロスを思い出し、乗り越えていきたいと思う。
感想文②
『走れメロス』を読んでとくに印象に残ったのは、人を最後まで信頼するということの大切さです。
メロスがいくつもの試練を乗り越え、セリヌンティウスと互いを信じ切る様子を見せたことで、暴君ディオニスの考えを変えることができました。
人間の強い心は周りの弱い心を確かに変えていく、その瞬間が簡潔な文体で力強く描かれていると感じました。
この作品を読み始めた時、メロスは熱くまっすぐな心を持ったヒーローのような青年だと思いました。綺麗な言葉ばかり言い、自分が間違いなく正しいという一貫した姿勢だったからです。
しかし、読み進めるとその印象は変わります。セリヌンティウスの処刑を防ぐため、自ら処刑されるために必死に走っているときに、誘惑に負けそうになります。友を見捨てて自分だけ助かろうという誘惑に。
この場面は、メロスの人間らしさ・弱い部分がよく出ており、とても共感しました。メロスにだって弱い心があり、それを乗り越えるためもがく姿に感情移入し、物語の世界に深く入ることができました。
メロスの世界と、現在私たちが生きている時代では、大きな違いがあると感じました。それは、ネットやSNSの普及です。
現代では人間関係が昔とは違っており、人とのつながり方・関係性が変化してきています。今では、見ず知らずの人とも簡単に交流がで、ゆるく広いつながりが簡単に作れるようになっています。
一方では、隣に住む人のこともよく知らないという状況も珍しくありません。
そんな状況なので、メロスの世界のように人を無条件に信頼するということが難しくなっているのではないでしょうか。
幼い頃に「知らない人についていっちゃだめ」「知らない大人と話しちゃだめ」と言われ、SNSでは「知らない人とつながらない」と言われて、私たちは成長していきます。
そうやって大人になっていく中で、多くの人に心を開いてはいけないのかなという考えに徐々になっていくのも不思議ではありません。
連日のように他人によって被害を負わされるという事件が報道される今の時代、仕方のないことでしょう。ただ、この点がメロスの時代と大きく違うところです。
メロスのように命をかけて友を守るような状況は現代ではまずありませんが、友達との約束や自分との約束(目標など)を守るのは大切なことです。これらを守る際に、メロスの強さを想像しながら行動することで良い結果につながると予感しました。
相手との約束なら、強制力が働いてまだ守りやすいと思います。約束を破れば信頼を失って、嫌われたりその後の関係性に悪影響があるかもしれないと、簡単に想像できるからです。
しかし、自分との約束はそうはいきません。心の中で、甘やかす言葉を自分にかけてしまいがちです。だからこそ、今日中に何ページ予習をする、などと自分を奮い立たせる意思の力が必要です。
『走れメロス』のシーンで例えると、メロスが山賊との闘い後に疲労困憊しまどろみ、友人を一度裏切りそうになったところです。
メロスもこの誘惑に負けそうになっていましたが、湧水を口にすることで弱い心を振り払いました。しかし、これを乗り越えることで、自分をより信頼することができ、次の試練を乗り越える確率だって高くなるはずです。
私たちも自分の弱い心を乗り越えることで、メロスたちのようにさらに強い絆が手に入ることでしょう。
この作品は、人を強く信頼することでさらに深いつながりを得ることを教えてくれます。その輝く様は暴君ディオニスの心を変えたように、周りの人の心に良い影響を与えます。
どれくらい時間がかるか、はっきりと結果が出るかは、その状況によるでしょうが、良い影響を与えるのは間違いないでしょう。
昔とは違って無条件に人を信じることが難しくなった今の時代だからこそ、メロスとセリヌンティウスの信じ切る姿は、私にとって感動的でした。
『走れメロス』の書籍いろいろ(漫画版・パロディ版等)
『走れメロス』は超有名な作品のため、複数の本で読むことができます。
まず定番はこちらの小説ですね。
漫画バージョンもあります。10歳まで向けですが、あらすじやポイントをサクッとつかむにはおすすめの一冊です。
感想文の題材にされやすい芥川龍之介『蜘蛛の糸』も収録されています。
こちらも漫画版です。メロス以外にも太宰の名作短編『葉桜と魔笛』『駈込み訴え』『眉山』『心の王者』など11の物語が読めます。
最後に番外編として、森見登美彦『新釈 走れメロス』です。
日本文学の名作5つを題材にパロディにしたもので、原型はあるんだけど全然別の話に仕上がっていて、かなり面白い一冊です。とくに、メロスのユーモアぶりは強烈でした。
感想文の参考にはなりませんが、楽しみたい!というあなたに、おすすめの一冊です。
「走れメロス」あらすじ・感想文 まとめ
「走れメロス」のあらすじ・感想文などについて見てきました。この作品では、人間の心の弱さ・信頼する心の素晴らしさなどが書かれており、読んだ後にいろんなことを考えさせてくれますよね。
- もし自分がメロスと同じ立場だったらどうするだろう?
- 友だちをどれくらい信じることができるだろう?
- 何があっても、一度決心したことをやり通すことができるだろうか?
といった感じで、自分の考え・経験がとても書きやすいと思います。
本記事でご紹介した読書感想文の例文を参考にしつつ、ぜひあなたらしい感想文を書いてみてくださいね(^^)/
素敵な感想文が完成することを祈っています☆
感想文の書き方のポイントについては、こちらで解説しています。
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