「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」を読みました。今回は、この本の感想やあらすじについて、書いています。「勇者たちへの伝言 いつの日か来た道」の文庫本の帯には、博多華丸大吉の大吉先生やピースの又吉直樹さんの推薦コメントが載っているので、書店で気になった方も多いのではないでしょうか。
また、作者の増山実さんもかなり気になる経歴なので、その点もあわせて紹介していきます!
「勇者たちへの伝言」作者 増山実さんの経歴
まず、増山実さんの経歴をご紹介します。構成作家をされており、朝日放送系列の「ビーバップ!ハイヒール」という番組のチーフ構成などを担当されています。作家になる前には、同支社大学卒業後、出版社に数年勤務されていました。
ビーバップハイヒールは、ハイヒール・ブラマヨ・筒井康隆などが出演している人気番組で関西では知らない人のほうが少ないのでは?というくらい面白い番組です。
私がまずはじめにこの本を面白いと思った理由は、増山実さんのこの経歴でした。構成作家で小説を書いている有名人といえば、まず思いつくのが百田尚樹さん。百田さんの小説は何作も読んでいますが、どれもものすごく面白くて、テレビの作家さんだからなのか映像的が思い浮かびやすいです。過激発言で騒がせている百田さんですが、小説は文句なしに傑作だと思います。
増山実さんは、百田尚樹さんとの共通点も多いんです。同志社大学卒業、関西の人気番組の構成作家(百田さんは、探偵ナイトスクープ)をされているし。もしかして、百田さんに触発されて小説を書いたのでは?なんて思ったり(※勝手な推測です)
第4回「大阪ほんま本大賞」受賞!
大阪ほんま本大賞に決定し、注目度が高まっています!発売した当初よりはぐんと目立つ位置に陳列され、かなり多くの人の目にとまっていること間違いなし👀
おはようございます。9月17日に開催するサイン会のお知らせをお伝えします。9/17(土)14時~第4回OBOP大阪ほんま本大賞「勇者たちへの伝言」増山実さんのサイン会を行います。(つづく) pic.twitter.com/syUExWsymw
— 紀伊國屋書店梅田本店 (@KinoUmeda) 2016年9月10日
ちなみに、「大阪ほんま本大賞」とは、大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい1冊のことです。過去には、高田郁『銀二貫』、三浦しをん『仏果を得ず』、朝井まかて『すかたん』と名作揃い!ハズレなしの注目の賞です。
「勇者たちへの伝言」のあらすじ
仕事に疲れた50代の大阪で仕事をする放送作家 工藤政秋が主人公。政秋は幼い頃、阪急ブレーブスという野球チームが大好きだった。番組のリサーチの仕事ついでに兵庫の夙川方面に行った際、ふと幼い頃父に大好きな阪急ブレーブスの野球を見に連れてきてもらった西宮球場のあった場所へ足が向いた。行ってみると、そこは大型ショッピング施設(本文では具体的名称は記載されていないが、西宮ガーデンズのことと思われる)になっていた。思い出の場所が跡形も消えていたと思ったが、建物内の一角に「阪急西宮ギャラリー」という小さなスペースを発見する。そこで、阪急ブレーブスの応援に人生をささげた団長 今坂と出会う。今坂とブレーブスについて語りながら、西宮球場のジオラマを見ていると、あっという間に時間が過ぎて、閉館時間。
その帰り道、ショッピングモールの駐車場の階段を下りて帰ろうと出口へ向かっていると目の前がすうと暗くなった。
気づくと、昭和44年ブレーブスの試合が行われている西宮球場の中だった。応援する若き日の団長今坂、なくなったはずの父親、子どもの体をした自分自身。タイムスリップをした正秋は、父との会話から父の秘密を知る。一度も語らずに事故で亡くなってしまった父の秘密。
その秘密から、野球を軸に、戦後の混乱期、高度成長時代、そして現代が混ざり合う不思議な物語が始まる・・・
読んでみた感想
野球、阪急ブレーブスを中心に、正秋・父・安子・バルボンなどブレーブスの選手たち、戦後・高度成長期・今と3つの時代が語られるお話です。もちろん、3つの時代のエピソードがそれぞれつながっているので、とても自然にすうっと入ってくるストーリーでした。
とくに、阪急ブレーブスの選手名やエピソードがたくさん出てきて、野球ファンにとってはドキドキするのではないでしょうか。バルボン、大熊、岡村、梶本、高井などなど、懐かしい~となる方も多いのでは。残念ながら私はリアルタイムで見たことなく、かろうじてチーム名をどこかで聞いたことがある程度でした。でも、そんな知識なくとも充分楽しめる内容です。
また、興味深かったのが、北朝鮮の暮らしが詳細に描かれていること。父の恋人である安子さんが在日の方で、日本から北朝鮮へと渡るため、そういったエピソードが出てきます。どんなひどい仕打ちを受け、どんな教育が行われ、毎日を生き延びているか、何となくイメージを持ってる程度なので、知らないことが多くとても印象に残りました。
巻末には参考文献が多数挙げられていて、「在日一世の記憶」「北朝鮮に嫁いで四十年」「帰国運動とは何だったのか」「北朝鮮難民」など、阪急ブレーブス関連の参考文献より北朝鮮に関する文献のほうが倍以上に多く載っていました。
それと、お!!と思ったのが、参考文献だけでなく、
ブレーブスの選手だった高井保弘氏、ロベルト・バルボン氏、今坂喜好氏に取材されているということです。こうなってくると、フィクションではありますが、ちょっとノンフィクション要素も入っているのかも。タイムスリップしてSFめいたところもあるのですが、細部のエピソードがリアリティがあり、とても読み応えある一冊でした。ブレーブスというチーム名の通り、勇気がもらえるます。元気になるエンターテイメントな本が読みたいという方にはぴったりの一冊だと思います。
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