「夜は短し歩けよ乙女」のあらすじ(ネタバレ)と感想|黒髪の乙女と先輩の恋の結末は?

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星野源さん・花澤香菜さんなど注目の声優さんによるアニメ映画化も話題の森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』のあらすじをご紹介します♪簡潔なあらすじ、ネタバレありの詳細なあらすじ、感想の順に書いてます。森見登美彦さんの代表作!恋愛ファンタジーの傑作小説の魅力が少しでも伝われば嬉しいです☆

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「夜は短し歩けよ乙女」あらすじ(ネタバレ無し)

クラブの後輩の”黒髪の乙女”にひそかに想いを寄せる先輩は、彼女と仲良くなるために、一生懸命に距離を縮めようとします。しかし、硬派で奥手な先輩は彼女にぐいぐい迫るわけではなく、ナカメ作戦(なるべく彼女の目に止まる作戦)というものすごく迂遠な方法で、彼女に近づきます。しかし、乙女はいっこうに先輩の想いは気づきません。不自然なくらい街中で先輩に頻繁に会うものの「奇遇ですねえ」と言うだけで、恋はいっさい進展せず。

 

彼女と距離を縮めるため、夜の先斗町、下鴨神社の古本市、大学の学園祭、など京都の街を縦横無尽に駆け巡る先輩ですが、なぜか行く手には恋路を邪魔する事件が発生し巻き込まれてしまうのでした。

 

個性溢れる曲者たち(富豪の李白さん、天狗のような術を使う樋口さん、大酒飲みの羽貫さん、助平オヤジの東堂さん、古本市の神様、パンツ総番長など)、数々の珍事件を乗り越えて、先輩の恋は叶うのでしょうか!?

と、大まかにはこのようなストーリーとなっています。大学生の先輩が、後輩である黒髪の乙女に何とかして近づこうとする恋愛・青春物語です。

ただ、上の簡易的なあらすじでは省きましたが、ファンタジー的要素がふんだんに盛り込まれており、夢のある小説となっていますよ☆また、森見登美彦節とも言うべき、コミカルで文学的な文体は一読の価値あり。大ベストセラーで、第20回山本周五郎賞受賞、第137回直木賞候補、2007年本屋大賞第2位など有名な賞も獲っています。

 

本作は、京都の実在の場所が多く登場するの魅力です。また、物語の世界観を素敵に演出するものたちもたくさん出てきますよ。これを読むと、より作品の世界に入り込めるかも☆あわせてご覧になってみてください♪

「夜は短し歩けよ乙女」詳細あらすじ(ネタバレあり)

では、ここでは詳しいあらすじをご紹介します。この小説は次の4つの章から構成されています。

  • 第一章 夜は短し歩けよ乙女
  • 第二章 深海魚たち
  • 第三章 御都合主義者かく語りき
  • 第四章 魔風邪恋風邪

各章ごとにストーリーを見ていきましょう(^^)/

第一章 夜は短し歩けよ乙女

先輩と黒髪の乙女は同じ大学のクラブに所属していました。四条木屋町の西洋料理店で行われたクラブの先輩のお祝い会がお開きになり、彼女はほかの人々に頭を下げて一人夜の街を歩いていきました。それを見た先輩は「今宵は私めと一杯」なんて誘うことができるわけなく、ただ近づくチャンスを求め、乙女の後をついていきました。

 

乙女は、お祝い会の最中に「好きなだけお酒が飲みたい」と強く思い、1人夜の街を彷徨っていたのです。まず訪れたのが、木屋町のバー”みゅーず”でした。

ここで、錦鯉を育てて売る商いをしている東堂さんに出会います。東堂さんは、乙女に偽電気ブランという秘密のお酒の存在を教えました。また、仕事が上手くいかず借金してること、人生訓など真面目な話を乙女にしつつ、東堂さんは乙女の胸を触り出します。

乙女のピンチに現れたのが、羽貫さんと樋口さんでした。二人は東堂さんを追い払ったのですが、この時東堂さんは風呂敷に包んでいた春画を落としてしまい、単なる助平オヤジであることが判明します。

 

羽貫さん樋口さんは、乙女と一緒に店を変えて飲もうと提案します。街を歩いていると、道にズボンが落ちていました。いつの間にやら樋口さんはそのズボンを履き、三人は料亭で開かれている詭弁論部の宴に混じりこみます。そして、ただ酒を飲みまくります。

 

ここで、樋口さんは乙女に李白さんというヘンテコな金貸しのジジイのことを教えます。李白さんはとても風変わりで、趣味が二つあるとのこと。それは、夜道を行く男の下着を奪うこと、偽電気ブランの飲み比べをすることです。

乙女を追っていた先輩は、得体の知れない男(東堂さん)と彼女が2人で歩いてるのを目撃します。救わなければと思ったところで、突然暴漢に襲われ、ズボンと下着を盗まれたのです。さんざんな目に遭い身を潜めていた先輩ですが、下半身素っ裸の窮地を救ったのは、羽貫さん樋口さんに店を追い出された東堂さんでした。

 

ヤケになった東堂さんは、先輩を鴨川に面した先斗町の2階にあるバーへ「奢ってやる」と言って連れていきました。そこに続々やってくるオヤジたち、ここは閨房調査団(色ごとに関する品を集める人々の倶楽部)の競売会場だったのです。借金に困った東堂さんは、コレクションの春画を売ろうとしていました。

 

乙女はというと、偽電気ブランが飲みたくて李白さんと飲み比べがしたくなっていました。羽貫さん樋口さんらと李白さんを京都の街を探し回ります。その噂が、閨房調査団の元にも流れ込み、みんな競売そっちのけで盛り上がりました。東堂さんはこんな連中に我がコレクションをくれてやるのか、と全部がどうでも良くなってしまい、いきなり春画を破り出します。「近寄れば頭から飛び降りて死ぬ」と窓のそばで騒ぎ出す東堂さん、そこに通りかかったのが乙女です。そして、東堂さんの借金をかけて李白さんと飲み比べをすると宣言したのです。

 

李白さんの三階建電車が京の町を走り、乙女のもとへとやってきました。そして、電車内でいざ飲み比べの勝負が始まりました。あまりの美味しさに時がたつのも忘れてどんどん飲んでいると、李白さんが限界を迎え、乙女が勝利します。皆に偽電気ブランがふるまわれ、その不思議な宴会はしばらく続きました。

やがて宴が終わり、皆が去って街は静かになりました。乙女は、一人暗い先斗町の石畳を歩きながら、呟きました。「夜は短し歩けよ乙女」

第二章 深海魚たち

下鴨神社で行われる古本市に乙女が来ると聞いた先輩は、ある計画を実行すべく糺の森へと向かいました。その計画とは、本を伸ばす彼女と自分の手が偶然触れ、紳士的に譲った後に微笑を浮かべ「そこの売店でラムネでも飲みませんか」と誘うというもの。

古本市で乙女を見つけた先輩は、駆け出したとたんに、少年にぶつかってしまいます。そして、少年に謝ったりアイスを奢ったりしてるうちに、彼女を見失ってしまいました。

 

古本市を歩いていた乙女は、樋口さんと偶然出会います。二人で焼きそばを食べながら、樋口さんは古本市の神様の話をします。この神は、古本の世界で起こるあらゆる縁を統べる存在で、神へのお祈りをないがしろにした蒐集家の書庫から本をさらうという天罰も下すとのこと。

 

乙女は、人生で読んだ本に思いをはせ、幼い頃いくら眺めても飽きなかった絵本「ラ・タ・タ・タ・タム―ちいさな機関車のふしぎな物語―」を思い出します。幼い頃名前まで書き込んでいたのに、今はもう手元にありません。この古本市でもう一度再会したいと、絵本コーナーへと向かいました。しかし、探してもいっこうに見つかりません。

樋口さんの提案で、知り合いの古本屋の主人に捜索を依頼することとなりました。この主人は、今日開かれる李白さんによる売り立て会に、樋口さんを助っ人として送り込もうとしている人物です。売り立て会とは、李白さんの与える厳しい試練を乗り越えた者だけが、目当ての本を1冊与えられるというもの。古本屋の主人は、岸田劉生の日記帳の入手を樋口さんに賭けていたのです。

 

先輩は、偶然木屋町の料理店を営む千歳屋の若旦那(閨房調査団の一員)に出会います。若旦那は、先輩に李白さんの売り立て会に参加し、北斎の春本を手に入れてきてほしいと頼みます。先輩は、報酬10万円と聞き即座に了承、会場へと向かいました。売り立て会の参加メンバーはこちらの面々です。()内は、それぞれの目当ての本。

 

  • 先輩(北斎の春本⇒途中から、「ラ・タ・タ・タム」)
  • 樋口さん(岸田劉生の日記)
  • 千歳屋(北斎の春本)
  • 京福電鉄研究会の学生(レアな時刻表)
  • 老学者(古今和歌集の写本)

 

会場のドアを開けると、異様な熱気に包まれていました。天井からシャンデリアの代わりに吊るされた炬燵、部屋の中央にも炬燵があり、その机上にはぐつぐつと煮える火鍋。さらに、参加者それぞれに、あたたかそうな綿入れ・湯たんぽが置かれていました。熱さに耐え、最後まで激辛鍋を食べたものが勝者となり、目当ての本を手に入れられるという命に関わりかねない過酷なルールだったのです。

 

貴重な本たちの中に、乙女が探している「ラ・タ・タ・タム」を発見する先輩。しかも、その本には彼女の名前が書かれていたのです。ロマンチック・エンジン全開の先輩は、当初の目的を忘れ、絵本を入手するため奮闘!最後は樋口さんとの一騎打ちとなりましたが、先輩が何とか勝利をもぎ取ります。

 

やっと目当ての本を手に入れられると思いきや、そこに古本市の神が現れ、李白さんのコレクションを全て古本市へ解放してしまいます。気づけば、ぎっしりあった本棚が空っぽになっていました。参加者たちは、本を追い求め古本市へと転がるように駆け出していきました。先輩も、絵本コーナーへと駆け出します。

 

乙女は「ラ・タ・タ・タム」を探し、絵本コーナーへともう一度やってきました。さっき探した時は見落としていたのかもと思ったからです。本棚を見ていると、一冊の絵本が呼びかけてきました。夢中で手を伸ばしたら、横から誰かの手が伸びてきました。それは、先輩でした。そして、心底驚いた様子で「ほら!早く買わんと」と言い、風のように去っていったのです。

 

先輩は突如として当初考えていた計画通りのことが起こり、パニックになり変な去り方をしたことを後悔します。どうでもよい気持ちになり、ある古本店で「内田百閒全集」を全部買おうとするも、そこでお金が足りないことに気づきます。そこを通りかかった乙女が、先輩にお金を貸してあげ、無事買い物を済ませました。

 

2人は、涼み台に腰かけて、少しだけ会話をします。日も暮れて空は深い緋色で海の底に沈んだように暗くなっていました。糺ノ森内の馬場の両側に並ぶ古書店の間には橙色の電燈が点々とあり、そのぼんやりした灯りを頼りに、人々は本棚の隙間を泳いでいます。

乙女「みんな、まるで海の底のお魚のようですね」

先輩「そうですね」

 

第三章 御都合主義者かく語りき

意中の乙女が学園祭へやって来ると聞いた先輩は、大学へ向かいました。友人の学園祭事務局長から、学園祭の平穏を妨げる二大問題「韋駄天コタツ」と「偏屈王」事件の存在を知ります。

韋駄天コタツとは、妙な連中が入って構内のいろんな場所に現れる神出鬼没のコタツ、「偏屈王」とは、構内の路上で突如上演されるゲリラ演劇のことでした。この演劇は、偏屈王とプリンセス・ダルマの恋物語で、大筋はこうです。

 

学園祭で恋に落ちた2人でしたが、偏屈王はあまりの偏屈ゆえにさまざまなサークルから恨みを買い、罠にはめられ行方知れずとなってしまいます。ダルマは、愛しい彼のために敵たちへ復讐をとげていく、というもの。

 

事務局長は、劇を止めようとダルマ役の女性を捕まえるのですが、その度に代役が立てられ、偏屈王のストーリーは続いていくのでした。

 

乙女は、学内を歩いていると偶然、樋口さん・羽貫さん・パンツ総番長と出会い、コタツで語らいます。このコタツこそ事務局長を悩ませる韋駄天コタツでした。乙女は、その後もいろんな教室でされている出し物を見に回ります。そこで、「像の尻」という作品に心奪われました。受付の女性が「可能な限り本物の手触りを再現して作った」という像の尻に触れた乙女は、感激します。

 

乙女が再び歩いてると、急に鉦の音が響き「偏屈王開演!」と声がしました。偏屈王が始まろうとしていたのです。しかし、主役のプリンセス・ダルマがやってきません。偶々居合わせた乙女が代役をやることに。見事、代役をこなし拍手喝さいを受ける乙女。劇団員は「次も一緒にやりましょうね」と声をかけ、あっという間に舞台を解体し去っていきました。

 

先輩が乙女を探し歩いていると、韋駄天コタツを発見します。そこで、樋口さんからパンツ総番長の名前の由来について話を聞いた先輩は、いたく共感します。

 

パンツ総番長は、一年前の学園祭の日に中庭で腰かけ休んでいました。その隣に疲れた様子の女性が腰かけました。そこに、突然リンゴの雨が降ってきて、二人は顔を見合わせます。その拍子に、二人同時に頭にリンゴが落ちてぽんと跳ねたのです。それが恋の始まりでした。楽しく話をしたのに、連絡先も聞けず別れてしまい、それ以来学校内で彼女を探しすも全然見つからず。一年発起して、再び彼女に出会えるまでパンツを脱がないと、吉田神社に願をかけ、今に至るとのことでした。

 

先輩は、パンツ総番長の力一杯の逆走ぶりを他人事とも思えず、握手を交わします。そして、乙女を探すため歩きだしました。先輩が歩いていると、ミステリー研究会が偏屈王のこれまでの経緯をまとめた冊子を見かけます。その冊子には、乙女がなぜかプリンセス・ダルマ役を務めていると書かれていたのです。

 

学内を歩いてた乙女は、再び偏屈王の演劇で名演を見せます。その後も乙女は、学園祭を回り、「ご飯原理主義者VSパン食連合」という討論会で、「ビスコを食べればよいのです」と一石を投じたりするなど楽しんでいました。再び「像の尻」に向かおうとしていると、また偏屈王が始まります。しかし、乙女はここで事務局長に捕まえられ、事務局本部のテントへ連れていかれました。もう芝居を続けられないと思いきや、めりめりと像のお尻がテントに突っ込んできたのです。像の尻の受付の女性(紀子さん)が乙女に手を差し伸べます。乙女は事務局から逃げ出すことに成功したのです。

 

追う事務局員たちをだますため、乙女のしていた達磨の首飾り、背負っていた大きな緋鯉のぬいぐるみを紀子さんが身につけます。勘違いした事務局員たち・先輩も、紀子さんを追いかけます。先輩は、乙女を追い校舎の屋上へ向かいましたが、別人であることに気づきます。屋上には、韋駄天コタツに入る樋口さんもいました。ここで、偏屈王を書いていたのはパンツ総番長であること、隣の校舎の屋上で間もなく、パンツ総番長や劇団員たちによって最終幕が上演されることが明らかになります。

 

先輩は、屋上の縁でつまずき落下してしまうも、運良く窓から出ていた物干し竿に捕まり、何とか隣の校舎屋上へ這い上がります。そして、パンツ総番長から偏屈王役を奪い、先輩は乙女と最終幕を演じます。

愛しの偏屈王にやっと再会できたプリンセス・ダルマ、二人は抱き合い赤面するようなハッピーエンドを迎えました。今まで外堀ばかり埋めていた先輩が、劇とはいえついに乙女を自らの両の手で抱きしめたのです。

 

観客らが去った後、パンツ総番長のもとへ紀子さんがやってきました。そうです、この女性こそが、リンゴの雨を同時に受けた恋人だったのです。思わぬところで再会できたパンツ総番長は「ご都合主義もいいとこだ!」と呻きます。先輩は、美しく羨ましい光景に涙ぐみました。涙をこらえる先輩を見た乙女は、「この人はたいへん良い人だなあ」と思いました。

第四章 魔風邪恋風邪

夏の古本市、秋の学園祭で彼女に近づいたはずの先輩ですが、いっこうに恋は進展せず、”いったい彼女は自分のことを一人の対等な人間として認識しているのか?”と悩んでいました。実は、乙女は学園祭以降、先輩のことを思い出すとボーッとしてしまうようになっていたのですが、もちろん先輩はそんなことは知りません。

 

京都の街は、風邪が猛威を振るっていました。羽貫さん、事務局長、紀子さん、パンツ総番長、東堂さんなどなど、乙女以外はほぼひどい風邪で寝込んでしまうほどでした。乙女は、知人たちの家にお見舞いに回ります。そこで、ふと気づくのです。いつも頻繁に街で見かける先輩にぱったり会わなくなったことに。もしや、先輩も風邪で寝込んでいるのでは?

 

お見舞いへ行く先々で、先輩が夜の先斗町・古本市・学園祭などで奮闘していたことを知った乙女は、今こそ先輩へ恩返しをせねばと思い立ちます。乙女は、ある古本屋のレジをする少年(古本市の神様)から、潤肺露(ジュンパイロ)という魔法のように効く薬を分けてもらいました。

 

その後、羽貫さんと出会い樋口さん宅に行き、風邪の大元は李白さんということを聞きます。部屋の外で物凄い突風が吹き、外を見ると竜巻でした。あれは、李白さんの咳でものすごいばい菌に満ちているとのこと。風邪の神に嫌われており風邪をひかない乙女は、糺ノ森の奥にいる李白さんに潤肺露を届け、京都から風邪を追い払う任務を引き受けます。李白さんに薬を飲ませ、しばらくすると咳もおさまってきました。

乙女は疲労でうつらうつらしていると、李白さんが突然大きな咳をしたのです。すると、かつてないほどの強風が吹き荒れました。これが李白さんに巣くっていた風邪の神様が追い出された瞬間でした。風邪の竜巻はぐるぐる回り、乙女も一緒に天空へと連れ去られてしまいました。

 

先輩はというと、自室の一人万年床で寝込んでいたのですが、風邪が見せる夢か現か、京都の街を竜巻に巻き込まれてぐるぐる上っていました。見上げると、何と竜巻の中に乙女がいたのです。先輩は何とか乙女へと近づきます。すると、乙女は「奇遇ですね」と言い、先輩は「たまたま通りかかったものだから」と答えました。先輩は手を伸ばし、乙女の手を握りました。やがて暴風から解き放たれた二人の眼下に広がるのは夜明け前の京都の街。街へ降りていく二人、朝日が乙女の白い頬を美しく照らし出しました。

 

万年床で目が覚め意識が朦朧とする先輩は、夢なのに彼女の手の感触がありありと残っていることを不思議に思います。はっと気づくと、ちょこん正座して手を握る乙女の姿がありました。乙女は「大変お上手な着地でした」と言いました。そして、手渡された潤肺露を舐めつつ、二人話をしました。先輩は、熱のせいなのかふいに「李白さんの風邪が治ったら、一緒にお祝いに行こう」と誘います。乙女はふくふくと笑って「ご一緒します」と答えました。

 

李白さんの快気祝いの日、乙女は今出川通にある喫茶店「進々堂」へ向かいました。お祝い会の前に、ここで先輩と二人で珈琲を飲む約束をしていたからです。乙女が緊張しながら、お店の扉を開けると、先輩は笑って頭を下げました。乙女も頭を下げて、先輩のもとへ歩み寄り、小さく呟いたのです。「こうして出逢ったのも、何かの御縁」

「夜は短し歩けよ乙女」の感想

森見登美彦さんの代表作「夜は短し歩けよ乙女」は、 山本周五郎賞受賞、本屋大賞2位のベストセラーであり、世間的な評価がとても高い一冊です。角川文庫版のAmazonのレビューを見ても、300件以上のコメントがあり、☆4つ・5つの評価がほとんどです。かなり満足度の高い内容と言っても、過言ではないと思います。

 

もちろん、私も大好きな一冊です。森見登美彦さんの本は複数読んでいますが、初めて読むならこれから入るのが読みやすくておすすめです。いちばんの魅力は、森見登美彦さんの文体です。ストーリー・設定・中村佑介さんのカバーイラストなど、ポイントはたくさんありますが、やはり一番の特徴は独特な文体です。

文学的な香りをまぶした屁理屈満載な文章はたまりません。言葉遊び満載の、現実と幻想が入り混じった不思議なおとぎ話のような内容となっており、きっとお笑いが好きな人は楽しめること間違いなしです。

 

しかし、もしもこの世界観に入り込めなかったら、つまらないと感じるかもしれません。いちいち文章が気になって、読み進めるのが辛くなるかもしれません。良くも悪くも、クセのある本と言えます。1ページ目から森見節全開なので、ここを読んで「何だか楽しそう」と思わなければ、見送ったほうが良いかもしれません。おそらく、冒頭から森見節が全開なので、気に入る人は買うし、いまいちと思った人は買わないため、ミスマッチが少ないのかなと思います。だから、高評価が余計に多くなるのではと予想します。

よくミステリー小説で結末でガッカリ!なんて話を聞きますが、この小説にはそれはありません。だって、文章が一番の魅力なので全部面白いのです。もちろん、ストーリーも面白いですよ。

 

京都の街を舞台に繰り広げられる大学生の青春物語、今大学生なら共感できることうけあいですし、昔大学生だったあなたも今なら考えられない不思議な情熱溢れ出す日々の記憶が、懐かしく甦ることでしょう。そして、きっと京都の街に行きたくなること間違いなし👞人生に役に立つ内容かはさておき、私にとっては、バカバカしくてあったかい気持ちになる豊かな時間を提供してくれる小説でした。

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まとめ

「夜は短し歩けよ乙女」のあらすじをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?ネタバレありの方で何となく内容は伝わるかと思われますが、古本市の神?韋駄天コタツ?風邪で竜巻?など、はてなと感じる点は多々あったと思われます。そこは、ファンタジーということで。とにかく、ハッピーエンドでとても読後感が良いことだけでも、伝われば幸いです。

 

アニメ映画化をきっかけに、多くの方がこの本を新たに手に取り、きっとハマってくださる♪と思うと、ファンとしては嬉しい限りです♪予告篇だけでも、面白さが伝わってくるのではないでしょうか☆

頭の中ではものすごくいろいろ考え思い悩むのに、乙女の前では一言二言しか話さない奥ゆかしい先輩の奮闘ぶりは、ぜひ小説で一読の価値ありです。また、乙女のほんわかとした思考も見逃せません。あらすじでは書ききれない、小説の地の文の魅力をぜひお読みになってみてください📖

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