森博嗣『人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいいのか』の感想

読書
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「すべてがFになる」のS&Mシリーズや「スカイ・クロラ」シリーズで大人気の作家 森博嗣さん。ここ数年は、「つぼねのカトリーヌ」など文庫でエッセイのようなもの、新書で「自由をつくる自在に生きる」「孤独の価値」など自己啓発?っぽいものをよく書いておられます。小説とちがって、森博嗣の考え方がストレートに出ているので、ファンとしてはとても読み応えがあります。
そんな中の一冊「人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいいのか」を読み終えたので、その感想を書いてみました。

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森博嗣 経歴や代表作について

感想の前にまずは作者の経歴をすこしだけ。1996年第一回メフィスト賞を受賞し颯爽と現れたデビュー当初は、理系ミステリ!と言われていました。「すべてがFになる」のS&Mシリーズが立て続けに出版されて、すごい勢いで売れっ子作家への仲間入りを果たしました。
その後もVシリーズ、Wシリーズ、スカイ・クロラシリーズはじめ、ハイスピードで出版していきました。
小説の中にプログラムの話題や工学的な単語が出ること、建築学科助教授との兼業だったことから理系ミステリと位置づけられていました。
2015年11月に出た著作「作家の収支」によると、19年間に280冊の本を出し、総発行部数1400万部、総収入15億円にものぼると書かれていました。この本では、詳細な収入(アニメ化でいくら増刷され、印税がいくら等)事細かに書かれている希少なぶっちゃけすぎな本です!

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「人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいいのか」感想

この本はタイトルにも現れているように、とてもふわふわとした捉えどころのない内容でした。まず書名が、すごいです。具体的な言葉がほぼ使われていない!普通、タイトルは作品の名刺代わりですから、いかに注意を引くかというのが大切になるのではと思います。

森博嗣作品は基本的にタイトルにこだわっていて、例えば、「魔剣天翔」「φは壊れたね 」「幻惑の死と使途」など、挙げればキリがないほど、印象的なタイトルが多いです。
だからこそ、本作のタイトルはふわふわしすぎて、森博嗣っぽくないなあと思っていました。でも、読んでみると、内容と合致していて納得のタイトルでした。

 

では、その内容ですが、要約すると「抽象的に考えるのもいいよ」ということだと思います。
多くの人は具体的な問題に捉われすぎていて、本質が見えていないのでは?という問題提起だと感じました。

例として挙げられていたのが「原発反対を唱える人々が反対ばかりで代替エネルギー案をあまり言わないこと」など。危険だから反対!のみで、火力発電や風力発電は本当に安全なのか?安全だから今まで事故が起きなかったのか?それとも、たまたま事故が起きなかっただけなのか?こういった声が少ないのは、問題の本質が見えていないことになりはしないか? そんな内容が書かれていた。

この問題の本質は、原発は安全と信じてしまったこと・危険を予測できなかったことなので、原発が危険だけど他は安全と盲目的に信じてしまうと、失敗から学べていないことになるのでは?とも。
ここで補足しておきたいのが、著者は別に原発賛成・反対どちらが良いと言っているわけではなく、具体例として挙げているだけですので。
また、流行に流されやすい人は具体的な事象に捉われすぎているという話も印象的でした。
今年の流行色は何色?とか、健康番組で納豆が良いと言った翌日スーパーで納豆が完売とか、全部具体的な情報に捉われすぎている結果ですよね。もちろん、これが悪いというわけでなく個人の自由ですが、この情報を発信することで誰が儲かるのか?ということもあわせて考えたり、納豆に入っている身体に良い成分を豊富に含んでる他の食品は何?などと考えるのも、またひとつの抽象思考なのでしょう。

この本では、このような具体的な問題から本質的な問題をすくいだすような考え方(抽象的思考)について、いろいろな点から触れられています。
大人になるにつれて知識や常識を吸収し、モノの見方はどうしても凝り固まってしまいやすくなります。意識しないと、子どもの頃の柔軟な抽象的な見方はできなくなるので、鍛錬が必要だなと思わされました。

 

抽象的思考について書かれた本を読んでいて思ったのが、説明されればされるほど具体的になってしまい、抽象的でなくなってしまうということ。
昔読んだ京極夏彦の小説「鉄鼠の檻」の話を思い出しました。悟りを開く禅僧が出てくるのですが、悟りは言葉にすると逃げてしまう、みたいな表現があったのです。悟りが何たるか私にはわかりませんが、とても個人的な経験である言語化できないものなのだろうとは想像できます。その感覚を表すぴったりの言葉がないというか。
悟り以外にも、芸術家や作家の創作欲(アイデアの原型)なども同じようにこの上なく抽象的なものということになりそうです。

 

本作では、抽象的思考の素晴らしさについて主張されていますが、もちろんそれだけではいけないとも言われています。いくら抽象思考をしたところで、現実に何か行動しないと何も変化が起こりません。行動するには、体を動かしわけで、それはとても具体的な行為です。抽象的にも考えた上で、具体的に行動するのが良いのでしょうね。

主観的・客観的にもっと多面的にもうちょっと考えてみよう!というのが、この本のメッセージだと受け取りました。
それだけかい!と感じる方もいるかもですが、抽象的思考にテーマを絞って書かれた本は
珍しいので、興味があれば読んでみるのも面白いと思います。森博嗣が今どんな毎日を送
っているかも書かれており、興味深い生活だなと思いました。

感想がものすごくフワフワしていますが、本を読んでもおそらくフワフワすることでしょう。

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