江戸川乱歩「人間椅子」のあらすじ【ネタバレあり】|椅子の中の恋とは?

江戸川乱歩の短編小説の中でも、特に人気の高い『人間椅子』のあらすじをご紹介します。そのタイトル通り、椅子の中に人間が入っているという物語です。斬新な設定が魅力なのはもちろんですが、心理描写や探偵小説の要素もあり、読み応えあるおすすめの作品です。

簡単なあらすじ(ネタバレ無し)・詳細なあらすじ(ネタバレあり)の順に載せています。あわせて、作中に出てくる名言・名文もまとめています。

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江戸川乱歩『人間椅子』簡単なあらすじ

毎朝、夫の登頂を見送っては書斎に閉じこもるのが、佳子の日課だった。有名作家の佳子のもとには、読者からの手紙が毎日のようにたくさん届く。ほとんどはつまらない内容だが、気になったものが1通あった。

それは、原稿用紙を綴じたもで、表題も署名もなく、突然「奥様」という呼びかけの言葉で始まっているのだ。佳子は、薄気味悪いと思いながらも、ぐんぐんと先を読み進めていくのだった。

~以下、原稿用紙の内容~

ある醜い容貌の椅子職人の男は、大きな肘掛け椅子に入ることを思いつきます。そして、実際にその椅子に入ったまま、何か月もの日々を過ごします。

初めに椅子が納品されたのは、ホテルのラウンジでした。椅子に隠れて過ごし、夜に盗みを働き、また椅子に戻り、彼らの間抜けな捜索を盗み見るのが、男のたくらみでした。しかし、盗み以上に興奮する不思議な快楽に、男は目覚めてしまうのです。

それは、椅子の中から椅子に座る肉体を感じることでした。男は、この不思議な感触の世界にすっかり惑溺してしまいます。

やがて、椅子は競売にかけられ、あるお役人に買われました。そして、立派な屋敷の書斎に置かれることになったのです。そこで、私はある女性に恋に落ちました。

奥様はとっくにお悟りでしょう。その恋人というのが、、、

といった内容です。これだけでも、この小説の面白さ、男の変態度が伝わるのではないでしょうか。いったい男はどうなってしまうのか?気になる方は、次の詳細なあらすじをどうぞ。

『人間椅子』詳細なあらすじ(ネタバレあり)

毎朝、外務省書記官の夫の登頂を見送っては書斎に閉じこもるのが、佳子の日課だった。有名作家の佳子のもとには、読者からの手紙が毎日のようにたくさん送られてくる。ほとんどはつまらない内容だが、なんとなく異常で気味の悪いものが1つあった。

それは、原稿用紙を閉じたものだったのだが、表題も署名もなく、書き出しがまた奇妙だった。突然「奥様」という呼びかけの言葉で始まっているのだ。佳子は、薄気味悪いと思いながらも、ぐんぐんと先を読み進めていくのだった。

~ここから、原稿用紙の内容~


私は、世にも醜い容貌の椅子職人です。椅子作りの腕の評判は良く、高級な椅子を多く手掛けていました。立派な椅子を作り、どんな高貴で美しい人がお座りになるのか、空想を楽しんでいました。しかし、椅子はやがて別世界に運ばれ、残るのはうじ虫のような生活をする私です。日々が味気なく死んでしまおうとさえ思いましたが、そのくらいの決心ができるなら・・・と、恐ろしい妄想を思いつき、実行に移したのです。

私は、作成途中だった大型のアームチェアに人間がすっぽり入れるような細工を施しました。食料を貯蔵する小さな棚を作るなど、二日三日入り続けても不便を感じないようにしたのです。そして、椅子に入ったままトラックに積まれ、高級ホテルのラウンジに設置されました。

この奇妙な行いの目的は、人のいない時を見計らい、盗みを働くことでした。椅子の中に人間が隠れているという突拍子のないことを誰が想像するでしょうか。この突飛な計画は見事に成功し、数日だけでたんまりとひと仕事すませることができました。

でも、そんな盗みより十倍も二十倍も私を喜ばせる奇怪きわまる快楽を発見したのです。椅子の中から、座る人間の肉体を感じるという不思議千万な感覚に溺れたのです。人々が集うラウンジに置かれていたので、多くの男女が入れ替わり私の入る椅子に腰かけました。

今まで顔を見ることさえ遠慮していた女性と、薄いなめし革ひとえ隔てて、肌のぬくみを感じるほど密着しているのです。椅子の中から、抱きしめる真似や、首筋に接吻することだってできるのです。椅子の中の恋に惑溺する私でしたが、時とともに相手が移り変わって行くのはどうしようもありませんでした。

ホテルに来てから数か月後、転機が訪れます。ホテルの方針が変わり、一般向きの旅館として営業することになりました。そのため、私の入った大型の椅子は競売にかけられます。そして、ある大都会に住むある官吏が椅子を買いました。椅子が置かれたのは、洋館の広い書斎でした。私にとって幸いだったのが、その書斎は主人よりは、むしろ若くて美しい夫人が使用することでした。それから一カ月間、夫人の食事と就寝の時間を除き、絶えず著作に没頭する夫人とともに過ごしました。

そして、私は夫人に”ほんとうの恋”をしたのです。初めて、自分の存在を知らせたいと思ったのです。想いはエスカレートし、ついには、恋人の顔を見て言葉を交わすことができたなら死んでもよいとまで、思いつめたのです。

とっくにお悟りでしょうが、その私の恋人とはあなたなのです。一生のお願いです。この哀れな醜い男に慰めの言葉をおかけいただけないでしょうか。

もしも、了承いただけるなら、書斎の窓にハンカチをおかけください。私はゆうべ屋敷を抜け出し、いまあなたが手紙をお読みになる時分には、お宅の周りをうろつき廻っております。

手紙はこの熱烈な祈りの言葉で終わっていました。身震いをする彼女のもとに、女中がいま届いたらしい1通の封書を持ってきました。宛名を見ると、さきほどの恐ろしい手紙と同じ筆跡でした。内容は、ごく短く、彼女を再びハッとさせる文句が記されていました。

「私は先生の愛読者です。別封お送りしたのは、私の拙い創作です。ご批評いただければ幸いです。或る理由から、原稿は先に投函しましたので、すでにご覧済みかと思います。作品の表題は『人間椅子』とつけたいと考えます。」

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小説「人間椅子」の名言・名文まとめ

ここでは、私がとくに印象に残った乱歩の文章を列挙しています。すべて、男からの手紙の中の文章です。椅子の中の男目線の文章は、純度の高い変態性に溢れています。

彼らは声と、鼻息と、足音と、衣ずれの音と、そして、幾つかの丸々とした弾力に富む肉塊にすぎないのでございます。

椅子の中の恋!それがまあ、どんなに不可思議な、陶酔的な魅力を持つか、実際に椅子の中へはいってみた人でなくては、わかるものではありません。それは、ただ、触覚と、聴覚と、そして僅かの嗅覚のみの恋でございます。

彼女が私の上に身を投げた時には、できるだけフーワリと優しく受けるように心掛けました。

たったひと目、私の恋人の顔を見て、そして、言葉を交わすことができたなら、そのまま死んでもよいとまで、思いつめたのでございます。

この他にも、椅子の中から視点での描写が多数あります。乱歩も椅子の中に入っていたのでは?と思ってしまうほど、いろいろ書かれており興味深い文章が多数あります。男の気持ちの移っていく様、激しい恋に目覚める過程など、常人ならざる変態的な思考にゾッとします。

あとがき

江戸川乱歩の名作「人間椅子」のあらすじについて、見てきましたがいかがでしたでしょうか。何とも言えない男の変態的な願望、椅子からの世界の見え方など、短いながらも読み応えある作品です。椅子の中に人間が入るという突飛な設定、最後のオチも印象的ですよね。

このあらすじを読むだけで、物語の内容は充分にわかるのですが、乱歩の魅力は心理描写にあると思います。椅子職人がなぜ椅子に入ろうと思ったか、椅子の中の恋に目覚め、奥様に手紙を出すほどに思いつめたのか、その過程が細やかに描かれています。男の手紙を読みだしたら、最後あっと言う間にその世界観に引き込まれてしまうことでしょう。

佐野史郎さんの朗読でも楽しめますよ💺

kanren01
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